【GR】コンクリートの豆知識 vol.2 ~冬はコンクリートに厳しい季節です~


こんにちは!エコモットの奈良です!
前回に引き続き、コンクリートのお話第2弾です。

北海道では冬用のタイヤに交換すると本格的な冬が始まります。
動物たちは冬眠の準備を始めているのでしょうね。
人や動物たちに厳しい冬ですが、コンクリートにとっても厳しい季節になります。
既に出来上がったコンクリートにとって、冬はどのくらい大変なのでしょうか。

コンクリートにとっての冬

コンクリートにとって冬の寒さは大敵です。
なかでも真冬日に最低気温が氷点下となる地域は、特に注意が必要となります。

多くの物質は温度が下がると体積も小さくなりますが水は違いますね。
前回のブログで、コンクリート内の水分が摂氏4℃以下の場合、体積が大きくなるとお話ししました。

【GR】コンクリートの豆知識 vol.1 〜コンクリートとは何かを学ぼう〜

さて、出来上がったコンクリート内にも水分はあります。
出来たてのコンクリートの表面は非常になめらかですが、時間の経過とともに少しずつ風化します。
風化したコンクリートに水分が付着すると、表面から水分が吸収されます。
基本的にこの水分がコンクリートに悪影響を及ぼすのですが、この過程で濡れた水分が凍りコンクリートが割れるといった単純な話ではないのです。

実はコンクリートには案外柔軟性があります。コンクリート製の橋の上にいる時、大型車が通過したら橋が揺れますが、すぐに折れたりしませんよね。
コンクリートには「曲げ強度」と言われるものがあり、ある程度は折れずに曲がり、その形状を保つことができます。

コンクリートの凍結融解による凍害

最低気温が氷点下となる地域は要注意ではありますが、そうなると北海道や東北のコンクリートは軒並み壊れてしまいますね。しかしそのようになっていません。実はもう一つ条件があり、それは「日中の気温の上昇」にあります。

コンクリートは経年劣化などで、水分が侵入しやすくなります。
その侵入した水分は凍結により膨張します。その後気温が上がるとまた体積が少なくなるので、新たな水分が入ります。
この繰り返しにより、より深いところまで水分が入り込み、いずれコンクリートを破壊するようになるのです。
これが凍結融解によるコンクリートの凍害になります。

コンクリートの凍害の仕組み

例えていうならば、固く結んだ紐を緩める時に、ちょっとずつ動かしたり、叩いたりしているうちに緩んでくるような感じですね。

靴の紐を締めたり緩めたりを繰り返すと少しずつ結び目の周辺が劣化しますね。
材質は全く違いますが、同じようなことがコンクリート内部でも起こっています。

 
実は冬のコンクリートにとって、もう一つの難敵があります。それが、雪を溶かすために道路に撒かれる融雪剤です。

コンクリートの融雪剤による塩害


積雪のある地域では、道路の雪を溶かすため融雪剤を散布します。
融雪剤の多くは塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの塩化化合物が使用されます。

基本的には融雪剤が水に溶けることで、凝固点が下がり、雪(固体)が水(液体)になります。
また、塩化カルシウムが水と反応する際に発する溶解熱も雪を溶かす要素になります。
ただし、凝固点が下がるだけなので、気温がさらに下がった場合は、いくら融雪剤を撒いても溶けません。

さて話をコンクリートに戻しましょう。この融雪剤に含まれる塩化物の作用により、コンクリート内部の鋼材が腐食することでコンクリートにひび割れ・剥離が生じることがあります。
これが融雪剤による塩害です。

塩害は、海岸線近くに位置するコンクリート構造物などが海水に定期的にさらされる状況が長期間続くと発生しますが、寒冷地の山岳部でも融雪剤などの影響で起こりえます。
塩化物が随時供給され塩分濃度が高くなってくる状況だと、塩害を起こしやすいようです。

コンクリートの塩害というと、海沿いの地域をイメージしますが、海水にさらされたコンクリートだけが塩害を受けているわけではないのですね。

塩害の仕組みについて


先に書いた塩害ですが、塩分が付着したからといって、それが水分と結びつき浸みこんで、すぐにその水分が鉄筋まで届き錆びさせるわけではありません。

前回のブログでも書いていますが、コンクリートには強いアルカリ性(pH12~13)があります。
鉄はそのアルカリ性のコンクリートの中で、不動態被膜という薄い膜を形成します。
不動態被膜は鉄と酸化物により生成されます。酸化物との結合というと酸化鉄(赤錆)と思われますが、一種の黒錆のようなものといえば、分かりやすいでしょうか。
この不導態被膜が鉄筋を保護します。

しかし融雪剤に含まれる塩化物イオンがコンクリート内に侵入し、鉄筋位置の塩化物イオン濃度が一定量を超えると、鉄筋を守っていた不動態被膜が破壊され鉄筋が腐食します。
鉄筋の腐食はいわゆる赤錆が生じる状態なので、鉄筋自体ももろくなりますが、体積も膨張します。

凍害は水が凍る際に体積が膨張することにより発生しますが、塩害は鉄筋の体積が膨張することによりコンクリートを破壊するのです。

コンクリートの塩害の仕組み

鉄筋コンクリートの鉄筋は引っ張り側の強度を高めるためなので、その鉄筋が脆くなり、その部分のコンクリートが破壊されると、構造物の強度に影響が出てしまいます。

コンクリートにとっても冬は厳しいのです

今回は、冬にみられるコンクリートの劣化原因をご紹介しましたが、その他にもさまざまな劣化原因があります。

本当にコンクリートは様々な外敵と闘っています。
コンクリートは非常に安価で使いやすく、丈夫で長持ちすると思われがちですが、実はいろいろな困難や障害に立ち向かいながら、人々の暮らしに役立ち続けています。

次回はその他のコンクリートの劣化原因をご紹介させていただきます!

↓vol.3はこちら!

【GR】コンクリートの豆知識 vol.3 ~コンクリートの劣化原因と対策~

↓前回のブログをおさらい!

【GR】コンクリートの豆知識 vol.1 〜コンクリートとは何かを学ぼう〜




参考文献:水村俊幸 他著「最新図解基礎からわかるコンクリート」ナツメ社(2018年発行)

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