生成AI時代の新規事業戦略


 ~競争優位をどう再構築するか~

はじめに

こんにちは、AX研究室の庄内です。このたび、開発本部データアナリティクス部からAX研究室へと組織改編があり、AIを用いたDXについて、研究・社会実装していく役割を担うことになりました。

最近、生成AI(ChatGPTなど)の登場で、かつて専門的で希少とされたスキルが一気に一般化しています。文章作成、画像生成、プログラム支援など、人間にしかできなかった創造的な仕事がAIで安く速く実現可能になりました。その結果、これまで競争優位だった技術や能力が急速にコモディティ化(一般化)し、企業は戦略の再構築を迫られています。
実際、専門家の間でも「AIが普及するにつれて、競争優位性は自社独自のデータでしか築けない」との声が高まっています[1]。ハーバード・ビジネス・レビューも生成AIの影響で企業は新たな顧客価値の提供を迫られていると指摘しています[2]。
本記事では、経営資源分析フレームワーク「VRIO」(価値、希少性、模倣困難性、組織)を用いて、生成AI時代に企業がどのように競争優位を再定義し、新規事業を開発すべきかを考えます。

生成AIによる競争優位の変化

生成AIの普及により、従来型の優位性が急速に陳腐化しています。例えば、新薬開発は巨額投資が必要でしたが、生成AIで低コスト・短期間に薬剤候補を作れるようになっています[3]。これにより、企業は従来の延長ではなく新しい差別化戦略が不可欠です[2][3]。

VRIO分析による競争優位の再定義

経済的価値(Value)の再定義

AIは単なる効率化ツールにとどめず、新たな顧客体験や価値創出に結びつけるべきです。AIを活用して革新的なプロダクトやサービスを生み出した企業(GoogleやAmazonのように)が真の競争優位を確立しています[4]。

希少性(Rarity)を追求する

生成AI自体はオープン化が進んでいますが、希少性は「自社だけのデータや知見」にあります。独自データでモデルを微調整し、汎用モデルにはない精度や専門性を提供できます。例えばマーケティング特化AIのJasper AIは、基盤モデルに自社独自のデータや機能を追加して差別化を図っています[5]。

模倣困難性(Inimitability)を高める

AIによる競争優位を持続させるには以下が重要です。

– ユーザーからのフィードバックを組み込んだ継続的な学習システム(DeepLのような事例)[1]
– AIを単体でなくエンドツーエンドで統合する能力[3]
– AI運用における信頼性・倫理的運用によるブランド確立[3]

組織的活用(Organization)を強化する

AIを活用できる組織文化や体制の整備が必要です。経営陣が明確なAIビジョンを示し、部門横断型チームを編成し、社員のスキル向上を進めることで、AIの潜在力をフルに引き出せます[6][7]。

生成AI時代の新たな成功要因(KFS)

生成AI時代に企業が成功するには、以下のような要素が重要です[3]。
– 独自のデータ資産
– 強固なデジタル基盤
– 迅速な学習・適応能力
– 抜本的な業務変革
– 外部パートナーシップの活用
– AIの信頼性とガバナンス

これらの要素を総合的に強化していくことで、競争優位を構築できます。

新規事業開発のためのアクションプラン

新規事業開発において推奨するアクションは以下です。

  1. AI活用の差別化ポイントを明確化する
  2. 独自データや知見の棚卸しを行い、具体的なAI活用シナリオを策定する
  3. 拡張性の高い技術基盤を整備し、外部パートナーとの連携を構築する

AIを活用した新たな価値創造を通じて、生成AI時代における競争優位を築いていきましょう。

エコモットでは、ITコーディネータ(DX認定サポータを含む)が支援いたします。
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参考文献