こんにちは!エコモット株式会社でIoT・AI・DXコンサルタントをしている本間です。
昨今、ビジネスシーンでのAI活用が加速する中、多くの方が「AIの出力が信頼できるのか」という不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、AI言語モデルにおける重要な課題である「ハルシネーション」について、その本質から実践的な対策まで、分かりやすくご説明します!
※本記事はAnthropic社が公開している「Reduce hallucinations」を基に作成しています。
なぜ今、ハルシネーション対策が重要なのか
AI言語モデルは日々進化を続けていますが、完璧な正確性を実現することは依然として困難です。
OpenAI社のような最先端企業でさえ、時として事実と異なる情報や、文脈から外れた出力を生成してしまうことがあります。
これが「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。
例えば、次のような場面で問題が発生する可能性があります。
- 財務レポートで存在しない数値が引用される
- 製品仕様書に誤った技術情報が混入する
- 法務文書で重要な条項の解釈を誤る
こうした誤りは、ビジネスの意思決定や重要な情報提供の場面で深刻な影響をもたらす可能性があります。
そのため、実務でAIを活用する際には、適切な対策が不可欠となります。
実践的なハルシネーション対策の基本
1.AI側に「わからない」と言わせることを許す
AIに完璧を求めすぎないことが、逆説的に精度向上につながります。
不確実な情報や十分なデータがない場合は、むしろ積極的に「わからない」「判断できない」と回答させることが重要です。
具体例:M&A分析の場合
ユーザー:
当社のM&Aアドバイザーとして、AcmeCo社のExampleCorpによる買収の可能性についてのレポートを分析してください。
<report>
{{REPORT}}
</report>
「財務予測、統合リスク、規制上のハードルに焦点を当ててください。もし、どの点についても不明な場合やレポートに必要な情報が不足している場合は、『十分な情報がないため、判断できません』と答えてください。」
わからないなら、わからないと言って!と指示し情報が不足している状況で無理な推測を避け、正確な対応が可能になります。
2. 引用による事実に基づく回答の徹底
長文書類の分析では、まず正確な引用を抽出し、それに基づいて評価を進めることが効果的です。
これにより、AIの解釈による誤りを最小限に抑えることができます。
具体例:プライバシーポリシーの監査の場合
ユーザー:
当社のデータ保護責任者として、GDPRおよびCCPAの準拠性に関して、この最新のプライバシーポリシーを確認してください。
<policy>
{{POLICY}}
</policy>
1. GDPRおよびCCPAに関連する重要な条項を、正確な引用として抽出してください。もし、関連する引用が見つからない場合は、『該当する引用は見つかりませんでした』と記してください。
2. 抽出した引用を使って、各条項の準拠性について分析してください。引用には番号を振り、その番号を参照しながら、引用された内容のみを基に評価してください。」
この方法により、AIは文書中の正確な引用に依拠して判断するため、余計な推測を排除できます。
3. 出典や参照元を明記してもらい、検証可能性の確保をする
AIが生成する情報には、必ず出典や参照元を付与するよう設定することが重要です。
これにより、後から各情報の正確性を検証することができます。
具体例:プレスリリース作成の場合
ユーザー:
当社の新しいサイバーセキュリティ製品「AcmeSecurity Pro」に関するプレスリリースを、これらの製品説明書と市場レポートの情報のみを使って作成してください。
<documents>
{{DOCUMENTS}}
</documents>
「プレスリリース作成後、各主張について検証を行ってください。各主張を裏付ける直接の引用が文書中に存在するか確認し、もし支持する引用が見つからなかった場合、その主張はプレスリリースから削除し、削除箇所は空の[]括弧で示してください。」
このプロンプトにより、最終出力が必ず具体的な引用に基づいており、検証可能な形で情報が提供されます。
高度な対策テクニック
1. 段階的な思考プロセスの活用
AIに最終回答までの思考過程を説明させることで、論理的な矛盾や前提条件のズレを早期に発見できます。
具体例:
Step 1: 与えられた情報の整理
Step 2: 必要な追加情報の特定
Step 3: 各要素の分析
Step 4: 総合的な判断
2. 複数回の検証によるクロスチェック
同じ質問を複数回行い、回答の一貫性を確認します。結果が大きく異なる場合は、ハルシネーションの可能性が高いと判断できます。
3. 継続的な改善プロセス
初期の回答に対して、追加の質問や検証を行うことで、段階的に精度を高めていきます。
4. 外部知識の制御
提供された資料のみに基づいて回答を生成するよう制約を設けることで、不確実な一般知識の混入を防ぎます。
まとめ
これらの対策は、単独でも効果を発揮しますが、複数の手法を組み合わせることで、より高い信頼性を確保することができます。
ただし、現時点では完全なハルシネーション防止は難しく、最終的な検証は人間が行う必要があります。
以下のステップで、段階的に対策を導入することをお勧めします。
- まずは基本的な対策から始める
- 業務の重要度に応じて高度な手法を追加
- 定期的に効果を検証し、必要に応じて方法を調整
- チーム全体で知見を共有し、改善を重ねる
AI時代における情報の正確性と信頼性を高めるため、本ガイドの手法を実務でぜひ活用してください!
なお、本ガイドは一般的な指針を示すものであり、具体的な実装方法は、各組織の状況や目的に応じて適切にカスタマイズしていただくことをお勧めします。
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