エコモット アドベントカレンダー 25日目【最終日】。
担当の岩津です。
『技術ブログ』と題しながらも営業部門とのコラボレーションでやってまいりましたアドベントカレンダーも今日で最後となりました。
開発部メンバーだけではなく営業部門の雰囲気も出てて良い感じになったのではないでしょうか?
過去のエントリーは上記リンクから確認できますので、ご興味ございましたらぜひご覧ください!
おそらく今年最後のエントリーとなりますので、今日は一開発者の立場で開発者に向けた話をしたいと思います。
なぜ、あなたのIoTプロジェクトは失敗するのか
※タイトルは中島聡さんの著書『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である』のもじりです。
IoTのキーワードが世間にも認知され、新聞やテレビでも取り上げられることが当たり前になってきた昨今ですが、そうなると”失敗”したプロジェクトが出て来るのも仕方の無いことだと思います。
グーグル検索で検索可能なIoT失敗例も続々と出てきてますが、「IoT、やってはみたが、駄目だった」というなんとも悲しい状況の数々。
これも氷山の一角ではないかと予想します。
一般的なシステム開発でも失敗するケースもあることを考えると、新しい未経験の分野に挑戦する分、リスクも高いというものです。
さらにテクノロジーのハイプ・サイクルもIoTが幻滅期に差し掛かろうとしている今、我々はただじっと我慢するしかないのでしょうか?
いやいや、そんなわけがない。
IoTの時代
ZDNet Japan
(引用)
一方、幻滅期は「冷静な判断」を行う時期で、短期的には幻滅したとしても、中長期で見ると重要なテクノロジや考え方が存在する状態のことだ。「本物と偽物の区別」が行われるのもこの時期だという。
この記事にあるように幻滅期はネガティブな状況ということではなく、「過度な期待が過ぎて、顧客自身が本当に必要な部分を見極める時期」と捉えることができます。
つまり、「お客さんもIoTの”可能性と限界”を理解し、より自分のビジネスに効果のある手段を選択しやすくなる」という状況が生まれ、その要望を現実世界に実装する我々はさらに高度な提案を求められるということに。
ますます高まるIT/IoT技術者需要、うかうかしてられない。
この辺りは過去の「パソコンの普及」だとか「インターネットの普及」そして「クラウド」を見れば、同じような流れになりそうとは思いません?
IoTと君のあいだに
では「IoTに幻滅する状態」とは具体的にどうすすめれば良いのでしょうか?
先程のZDNetの記事にも言及があります。
「ハイプサイクルにおいて最も注目すべきなのは幻滅期である。なぜならば、この時期に位置するテクノロジに対して、需要側と供給側が歩み寄る現象が起こり得るからだ。それはすなわち、テクノロジが具体的な商品やサービスになり、市場が形成されていく状態になることを指す。他のテクノロジとの連携や融合といった現象もこの時期に起こり得る。そうした幻滅期を経て根付いたテクノロジこそが、その後、確固たる市場を形成し、長期にわたって使われ続けるものになる」
なるほど、わかりそうでわかりません。
「歩み寄って具体的な商品やサービスになって根付いたら長く生き残る」って当たり前といえば当たり前のような気がしますし、具体的にどうすればいいのかわからないと実装できないですよね。
「需要側と共有側が歩み寄る現象」というのは、いろいろと解釈があるかと思いますが、私は「IoTベンダー側がユーザーのビジネスについてより理解し詳しくなる」、「ユーザー側がIoT技術の利活用についてより専門的になる」など相互の情報交流がすすんで結果として提案と技術のステージが何段か上がるような理解でいます。
これって、IoT以前の一般的なシステム開発と根幹は一緒ですね。
IoT上手
IoTの目的は数々ありますが
- コスト削減
- 生産性向上
- 品質向上
- 売上増加
- 事業転換
- ……
これらを実現する手段として
- センサーの活用
- アクチュエータの活用
- モバイルデバイスの活用
- デバイス開発
- クラウド環境の活用
- 大規模データベースの活用
- 機械学習の活用
- ……
などなど様々な方法があります。
目的だけみればIoTという言葉が出て来るまえから企業は延々とやり続けていたことですし、IoTが出てきたことで何が変わったのでしょうか?
それは単純に技術的そしてビジネス的な世界の「未開拓領域(ないし未経験領域)」が増えたことによるものだと私は思います。
インターネットの普及によって新しいサービスやビジネスが生まれ、その裏で様々な技術の革新と発見があったように、IoTの流れが加速することによって未開拓領域の拡大も加速します。
これは一般的に「チャンス」と言い換えることができます。
しかしIoTにより切り開かれた未開拓領域はいままでの領域とは少し異なり、ソフトウェア、ハードウェア、ビジネスモデル、ネットワーク、セキュリティ、学術、医療、安全…などなどありとあらゆる要素が渾然一体となった「フルスタック」のスープのような状態です。
このような未開拓地では常に危険が隣り合わせ。
IoTが上手にできるということはこの未開拓の領域で生存(サバイブ)できる能力にほかなりません。
逆説的な言い方をすると「まず死なないことが生きること」なのです。
開発者においては多少ルールの異なる世界に来たことを意識する必要があります。
IoTのララバイ
そこで提案したい生き残るための4つの行動
- 監視(Observe) … 発見・追尾
- 情勢判断(Orient) … 監視結果をもとに状況の判断
- 意思決定(Decide) … 採るべき方針を決定
- 行動(Act) … 実際の行動
これはOODAループって言われるものですね。
OODAループ:Wikipedia
OODAについては上記のWikipediaか
の記事をご参照ください。
未開拓地では安全を確保することは難しいです。
にもかかわらず、チャンスという名の未開拓地で成果を上げることを求められています。
この場所では”怪我をしないこと”は諦めてください。
もっと言うと”早く怪我(失敗)をしてください”。
より正確に言うと”(ダメージが小さくてすむように)早いうちに怪我をしてください”。
OODAループを高速に回すことで、「今自分のいる状況を即座に判断し、進みながら考えられる」ようになります。
危険な領域を進むことで怪我はしますが、その怪我は小さくできます。
後ろ向きのように聞こえますが、チャレンジすることを前提とした話です。
IoT船
ビジネスに置き換えると、小さい失敗から学び柔軟にそして素早く軌道修正をかけることで致命的な状況を回避することができますので、事業という船が座礁することを防ぐことが目的になります。
そのためにどのような設計や実装を採用するべきなのか。
それは正直「ケースバイケース」だと思います。
未開拓領域では一つの方法では対応できません。
当然王道はありません。
たとえば「小さく始められるものは、小さく始められるように。大きく育つパスを設計に組み込みながら、実装を最小に」という方法は、現実的に採用しやすいと思います。
最初から大きいスケールにする必要があるのであれば別ですが、事業として成功するかどうかわからないものにいきなり投資することはあまりないでしょう。
小さい階段を登るようにシステムの設計を柔軟にコントロールできるようにすることが結果として怪我を小さくできます。
また、分業で開発専従であればあるほどビジネス側との距離が開くことがあるかもしれませんが、ビジネスモデルと直結しやすいIoT分野ではいかにビジネス側の動きと素早く連携するかがダメージを左右します。
よりよい開発を達成するために可能な限りお客さん以上にビジネスモデルも理解しましょう。
※このあたりの話はいろいろあるので、機会があれば書きたいと思います
IoTの星(まとめ)
今回のまとめです。
- IoTプロジェクトが失敗するケースはいろいろある
- ルールが変わったことに気づかないと怪我をする
- 怪我を最小にするためにOODAループを使う
- 柔軟にそして素早く方向転換する
未開拓領域においては失敗は挑戦の証なので、積極的に小さい失敗を積み重ね、最終的に目指す成果に到達しましょう。